標準化の恩恵を最大化する

標準化によるPC環境のプラットフォーム化において期待される恩恵を最大限に享受しているか?

サービスモデルへの移行が進むなか、IT部門にとってはサービスを構成する重要なフロントエンドではあるが、できればプラットフォーム化したユーザーのPC環境はアウトソースしたいというニーズが高まっている。

PCプラットフォームサービスのアウトソーサーとしても、ユーザーIT部門の期待に応えるサービス価格を提示し、かつ、利益を確保したいと考えている。

これを実現するためには、いかに効率よく統制がとれた環境(プラットフォーム化されたPC環境)を維持するために管理(IT資産管理)を行うかが重要な鍵を握る。特に、プラットフォーム化のための標準化の恩恵をライフサイクルのすべてのステージや、自動化テクノロジーによる省力化において最大限にその恩恵を享受し、すこしでも予期せぬコストの流出を食い止めるための考慮と仕組みが実装されていることが求められる。

PCの標準化にはセキュリティ対策、コンプライアンス維持、コスト削減など様々な利益の期待がある。

PCハードウェア、アプリケーション、OSの環境設定など、標準化はできるだけパターンの数を少なく、バリエーションを減らし、逸脱を制御することが望ましい。

それでは、標準化はどのようにその利益を最大化すべきか?

ライフサイクルを通して、標準化を前提にその利益を最大化するための考慮すべきポイントを以下にあげる。

サービスカタログ

資産管理の開始点は、IT資産管理プログラムの立上げやポリシー、プロセスの策定などあるが、実際の管理作業の開始点は標準化の作業からといっていい。そして、その標準化されたエンドユーザーの環境をどこまでパターン化して管理を自動化するかで省力化の範囲やボリュームが決まり、効率化やコスト削減が可能となる。

標準化された環境パターンの情報は、データとして様々なフェーズで再利用され、できる限りの再入力や、転記を避けなければならない。せっかくパターン化して自動化の対象にしても、再入力や、入力ミスなどにより食い違いの修正など管理工数を増加させてしまっては標準化による利益が損なわれてしまう。

残念なことに、標準化をしたことで安心し、標準化を最大限活かしきれずに、その恩恵を十分に享受できていない組織が多い。

サービスカタログには、標準化された資産モデル(ハードウェア、アプリケーション、環境設定)のリストが提供されており、その情報がライフサイクル全てのステージで、様々な役割と責任の要員によって繰り返し利用されることで標準化の利益を最大化することが可能となる。

発注

標準化されていれば、サービスカタログで選択された環境は、リリース・展開管理における検証済みであり、すでにベンダーも特定されカタログの情報を利用して発注することができる。したがって、発注までにはベンダー管理により契約条件なども十分に検討されているので測定項目も明らかになり、対象となる測定項目が監視・管理されるように自動化のためのツールで標準化された環境の測定項目、閾値、逸脱、違反の対応プロセスや食い違いの対応プロセスから整合化、是正のプロセスが検討され準備されている。

ベンダー管理にはIT資産管理マネージャ、当該分野の技術専門家(ソフトウェアやハードウェア)、契約(法務)担当、財務(会計)担当、購買担当が発注にいたるまでの標準化および標準環境の管理の取り組みの摺合せと合意がなされていなければならない。

ソフトウェアのライセンス管理などは発注までに当該契約の諸条件を基に、使用許諾契約の条件に則った運用が可能で、コンプライアンスを維持するための測定項目が運用管理の計画に盛り込まれ、監視され、整合性の維持や検証ができるという状態でなければならない。

受領

標準化された資産の受領処理は、すでに受領において確認すべき具体的な構成項目がシステム(IT資産管理リポジトリ:CMDB:構成管理データベース)に登録されている。受領作業も、受け取りから実際の受領する構成項目の全ての確認を終えた段階で、請求書の突合情報を財務担当者へ提供することができる。

請求書には、納品書と同じレベルで突合確認ができる情報が発注以前のベンダー管理プロセスにおいて合意されている。

契約管理

標準化された資産の契約管理は、すでにベンダー管理プロセスにおいて戦略ベンダーか優先ベンダーとしてその契約内容は確認され、契約条件に基づいた運用が行われコンプライアンスが維持されるための管理を実施するに必要な測定項目が監視できる仕組みが用意されている。合意されたソフトウェア契約は使用許諾契約の諸条件に則って運用されなければならない、そのためにはこれらの運用条件を理解し、コンプライアンス違反が発生しないように監視する仕組みが導入され、常に逸脱、違反がないかを監視し、運用状態に不整合が認められれば、それを是正するためのプロセスが始動するよう準備されていなければならない。標準化された資産の契約はできる限り統合され契約内容の不整合なく、契約期間を調整し同様の契約は統合されることで管理効率を上げ、コストを下げることができる。

キッティング

標準化された環境はディスクイメージとして管理されている。ディスクイメージの作成にはソフトウェア契約時の運用条件が順守されるよう測定項目と監視の自動化が準備されている。キッティングにおける標準化による効率化は、効率的な例外処理を管理することだ。最小限に抑えられたディスクイメージの数と、キッティングで個別処理されるべきユニークな情報の処理により逸脱を最小化し、標準となるベースラインを維持する。

一方で、誤った標準化の利用としてはディスクイメージの作成が安直に行われ、標準化の名の下で短絡的なディスクイメージの管理を行い、かえってコンプライアンス違反の温床となり、コストやリスクを上昇させている場合がある。

具体的には、ディスクイメージの作成のための環境構築は、展開を考えて以下のポイントを考慮する:

・アプリケーションのインストールはOEM版を使用しない(OEM版はハードウェアに紐づくので展開するとコンプライアンス違反となる)

・管理などに使用するツールなどのインストールイメージで個体を識別するような自動生成される識別子があれば削除した状態や個体を識別するに必要な情報は別途処理を行う

・レジストリキーなどに個別のライセンスキーがコンプライアンス順守のために必要となるソフトウェアを識別し、必要に応じたライセンスキーの実装と管理を行う

・インベントリ情報とIT資産管理リポジトリの情報を紐づけるためにユーザに作業をさせない。発注から管理すれば、キッティングの時点で、出荷先ユーザはすでに分かったうえで環境構築をしているのでインベントリ情報との紐付作業もキッティングからユーザに出荷する前に実施できる。

・インベントリ情報を取得し、IT資産管理リポジトリに登録されたキッティング指示と同様の環境情報と出荷準備が完了している環境を比較しベースラインと実際の構成の齟齬がないことを確認する。

ヘルプデスク/サービスデスク

標準化による恩恵を享受すべき機能として重要なのがヘルプデスク/サービスデスクだ。

ハードウェア、ソフトウェア アプリケーション、環境設定など標準化され、プラットフォームとして提供されているPC環境ではFAQやトラブル対応などナレッジの蓄積と共有が効率化に大きく影響する。標準となる設定はハードウェアの構成、ソフトウェアのバージョン、ソフトウェアの環境設定項目や設定値などがベースラインとして管理され、ベースラインに変化があれば、これを管理し、常に最新のベースラインの情報が参照可能でなければならない。インベントリ収集などで集められた情報はベースラインとの突合によりその逸脱はアラートを発行しイベントとして管理され、ベースラインとの不整合を是正するプロセスが設計されてヘルプデスクと資産管理チームの役割分担が明確になっていなければならない。ソフトウェアのバージョンに関してはソフトウェアによる依存関係が特定のバージョンを要求する場合など、これらの情報も常に共有され、何故この特定のバージョンが求められるのかの理由が理解されていることも重要だ。

問題管理

標準環境における問題管理は、根本原因が追究されその解決策が見出された場合、特定の標準環境に対してその対応がすべて適用されるべきであることから、問題管理における優先順位の管理について標準環境の優先順位が考慮される。標準化されプラットフォーム化されたPC環境における適切な問題管理の実施は直接的にコスト削減に貢献するため、標準化の恩恵を十二分に享受するためにも問題管理の結果が有効に標準環境に適用されるように変更管理プロセスが考慮されているべきだ。

変更管理

標準化されたプラットフォームは逸脱の幅が狭いほどヘルプデスクにおけるインシデント管理や、問題管理の対応の効率が良くなる。つまり、標準を逸脱する環境に発生する環境の違いに起因して無駄に発生する、似て非なるインシデントや問題をサポートするコストを制御し削減することが可能となる。

したがって、変更管理においては、標準化されたプラットフォームに対して施される変更が、一律、同じ標準環境に対して実施されることを念頭に管理を行う。ここで逸脱を発生させてはいけないので、プラットフォームに対して実施すべき変更は、リリース・展開管理を経てプラットフォームに対して一律実施される。

標準化の目的は、PC環境をプラットフォーム化し、パターン化することでナレッジの蓄積と共有の価値を最大化し、効率性を高めることでコストの上昇を制御し、結果としてコストの削減を実施することにほかならない。プラットフォーム化するための標準は逸脱を監視し、逸脱の幅を最小化する管理プロセスが重要となる。

プラットフォーム化されたPC管理を、そのハードウェアやソフトウェアの構成から環境設定の情報、ベースライン、変更履歴、契約情報、会計情報など必要となる情報を関係付けて管理するデータベースが構成管理データベース(CMDB)だ。IT資産管理リポジトリ自体がCMDBとして構成管理システム(CMS)を構成することが望ましい。

CMS は、効率のよい管理プロセスをライフサイクル全般を通じて関係する様々な役割や責任を持つステークホルダーに対して必要なビューを提供し、ライフサイクルを通じて効率のよい管理のための情報統合レイヤーとして情報を統合し、構成する情報の関係性を管理する。

さらに、1st Tier のサービスプロバイダであるIT部門がPCプラットフォームをアウトソースしたとしても、エンドツーエンドのサービス保証に必要となるPCプラットフォームがサービス管理の一環として管理され、必要な情報が常に必要なステークホルダーによって利用可能であることを保証するに必要なレベルの情報がCMDBを管理するアウトソーサーがIT部門が管理するCMSとの連合を実現することでPCプラットフォームサービスというサービス粒度をアウトソースしながらシームレスなエンドツーエンドのサービス管理を可能とする。

ステークホルダー毎のビューの提供

管理プロセスにおいて収集され、関係性が管理された情報はCMDB(CMS)によってロール(役割)の異なるステークホルダーが蓄積され共有されるナレッジとして、個々の視点で必要な情報としてアクセスができる。これにより情報は常に鮮度が維持され、整合性が維持され、タイムリーにステークホルダーに提供される。

ライフサイクルを通して様々なステークホルダーがプラットフォーム化されたPC環境の健全性を維持するために時系列的あるいは同時進行的にそれぞれの作業を実施するが、ステークホルダーを全網羅し、ライフサイクルを通して共有できる情報統合レイヤとしてCMDB(CMS)が機能することで高い効率性を実現することが可能だ。

標準化されプラットフォーム化されたPC環境の管理の自動化アーキテクチャ

サービスカタログを利用した標準モデルのリクエスト処理はその申請・承認プロセスからワークフローを自動化することが可能だ。その他にもパターン化されたプロセスをワークフローの自動化テクノロジーを利用することでプロセスの逸脱を制御することが可能となる。自動化テクノロジーの導入において最も重要なのは前述のステークホルダー毎のビューがそれぞれのロール毎のプロセス設計の結果として求められるビューを定義した上で、ステークホルダーの満足度が高い状態で提供される、ということだ。

ステークホルダーを全網羅していない、あるいは、ライフサイクルを通して自動化テクノロジーの利用が考慮されていない場合、部分最適化のための自動化テクノロジーの導入は利用価値が低く、ステークホルダー全員に利用されず、その価値を発揮することなく失敗に終わる。ステークホルダー全員の利益が考慮され、全体最適が考慮されているからこそ、そこに価値が生まれ、価値があるからステークホルダー全員に利用され、標準化による恩恵を最大限に享受し、全体最適化が実現されるのだ。

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